犯罪白書から刑務所の現状と将来を

令和5年の「犯罪白書」の内容から、刑務所の今を書いてみたい。
全国の刑事施設は刑務所59庁・少年刑務所7庁・拘置所8庁、支所が刑務支所8庁・拘置支所94庁あるが、令和4年末現在、収容定員8万5680人(既決6万8297人・未決7383人)のところ、収容人員4万1541人(前年末比3004(6.7%)減)既決3万6296人・未決5245人である。
平成18年には8万1255人を記録したが、19年以降減少し、令和4年末現在の4万1541人は戦後最少を更新した。                     
受刑者3万6296人で換算 


令和4年度の刑務作業における歳入額は約21億4600万円(受刑者1人当たり59124円)令和5年の1人1ヵ月当たりの作業報奨金支給額は平均4578円(年54936円) 20歳以上の受刑者1人1日当たり食費543円21銭(主食97円9銭・副食446円12銭) 
被収容者1日1人当たりの収容に直接必要な費用は2249円(年297億9484万円) 
(なお、刑務作業には生産作業・経理作業や職業訓練などがあり、売上が生産作業分でしか利益を出さない事や、製品の単価が低い事、受刑者の減少によって、歳入が少ない) 

令和5年8月現在、大阪拘置・加古川刑・高知刑ではPFI方式で給食業務を、静岡刑・笠松刑・喜連川と播磨社会復帰支援センターでは運営業務の一部を民間委託している。横浜刑・川越少刑もPFI方式で給食業務を民間委託する事が決定している。 
令和元年12月の「無期刑の執行状況及び無期刑受刑者に係る運用状況」(平成21年~30年までの10年間のデータ)を見ると、平成30年末の無期刑者数は1789名である。(全受刑者の役4.9%) 
過去10年間の無期刑の新受刑者355名、仮釈放者89名(うち新仮釈放者は67名)、死亡者210名である。
(新仮釈放者は、仮釈放取り消し後、再度仮釈放を許された者を除く)
平成30年の新仮釈放者の平均受刑在所期間は31年6月である。 


無期刑受刑者の在所期間及び年齢(平均)は、1789名中 ….

10年未満 370名(20.7%)51.2歳 
10~20年 848名(47.4%)55.7歳 
20~30年 295名(16.5%)64歳 
30~40年 225名(12.6%)69.3歳 
40~50年 40名(2.2%)73.4歳 
50年以上 11名(0.6%)80.6歳 
10年以上 小計1419名(79.3%)60.3歳 

平成21年~30年の10年間の仮釈放審理が終結した329件の状況は、 
許可72件 
許可しない254件 
その他3件(その他は死亡など) 

許可された72件のうち、年度ごとに見ると、(カッコ内は許可しない件) 
平成21年 6(18)件 
平成22年 7(60)件 
平成23年 6(22)件 
平成24年 4(13)件 
平成25年 8(21)件 
平成26年 4(19)件 
平成27年 11(20)件 
平成28年 6(21)件 
平成29年 9(31)件 
平成30年 11(29)件 

犯罪白書によると、令和4年の受刑者の入所受刑者懲役1万4410人 
男性12856人で刑期別で5年を超える者は6.3%(約809人) 
女性1554人で刑期別で5年を超える者は2.5%(約38人) 
一方出所受刑者は17973人で、仮釈放10636人、満期6479人、死亡263人などとなっている。 

受刑者の目から見ても、年々受刑者の減少と、高齢者の割合が増え、長期刑の刑務所では無期刑の者が減らないので、自然と割合が増えている。 
令和7年6月から「拘禁刑」に係る規定が施行されると、これまで懲役受刑者には、矯正処遇として、作業の実施が前提とされていたが、そうした制約がなくなり、個々の受刑者の特性に応じて、作業と指導を柔軟かつ適切に組み合わせた矯正処遇が行われる。

刑務所がこうした指導を増やしたり、受刑者の人数が減り、高齢者が増えてくると、作業の量を確保する事が難しくなる。
外部事業者の委託する生産量をこなせなくなったり、作業効率の点からも、刑務所内で人員の配置転換や工場の統廃合や、地方の刑務所も施設の老朽化によっては、設備の整った施設へ統廃合を進める事も必要だろう。
職員や医療など人員不足や施設ごとに再編し、廃止する施設の維持管理コストから、活用方法を検討し、奈良少年刑務所の監獄ホテルのように民間に売却できれば良いが、検討課題である。
また、こうした施設の活用方法として、使用を続けるにしても、人員の減少を見据えて、空き地を活用し、農業として活用し、ビニールハウスで野菜を作る事を提案したい。
刑務所は、高齢者も多く、障がいを持つ人も多いので、反復単純作業が多い農業はこうした人に向いている。
もちろん、屋外でビニールハウスとはいえ、熱中症対策を万全にして、受刑者も短時間作業にする。
健康や体力作りの点でいっても、農業は良い。最近の物価高もあり、収穫した野菜を食事に使用すれば食費も補える。
民間の事業者にも参入してもらい、ICTを使った農業など実験場として使って貰う事を考えるべきだ。
現代は大量生産ではなく、多品種を少ロットで生産する時代であり、農業以外にもスタートアップ企業が刑務作業に参入しやすくして、成長軌道に乗るまで安価に参入できるように国や経産省が法務省と連携して支援すれば良いだろう。 

また、受刑者は高齢者も多く、同意を得た上で、医療や医薬品、健康などの検証をしやすい。
民間にデータを提供しやすい環境は、医療データを収集するにはうってつけだ。
将来は、外部事業者が刑務作業を通して受刑者の能力、スキルや人となりを知った上で、協力雇用主として雇用する事もできる。
社会ではリモートワークで働ける時代であり、施設と民間事業者が整備したうえで、リモートワークで仕事を請け負うこともできるようになれば良いだろう。民間の事業者が広く参入してくれば、刑務所の歳入も増え、受刑者の作業報奨金を増やせる。 

また、受刑者が自分で本を読んで学ぶだけでは限界がある。
そこで、教育的処遇日に全員に同じ教育的VTRを流したり、画一的な教育ではなく、例えば余った時間に役に立つスキルの動画を流したり、外部講師による金融経済教育をする事など、個々の学びたいを選択できるようにするのが良い。今は、気軽に無料で学べる動画を見る事ができる。
こうした民間の物を有効に活用し、本当に役立つスキルを身につける事が必要だ。
受刑中だけではなく、出所から老後までを見据えて、お金や年金について金融経済教育は欠かせない。 

国も、受刑者の再犯防止や、スタートアップの育成、農業の促進、金融経済教育と力を入れているのであれば、刑務所にも民間の知恵や人材を参加させて、この取り組みを進める事は政策からしても合致する。
民間が刑務作業に参入する時に、保証金を積ませたりせず、設備も国が支援し、スタートアップが安価に参入できるように、すべきだろう。 

2024年9月4日

 

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