ほんにかえるプロジェクトプロジェクトの発起人・汪楠について

 

 私自身、親の都合で日本に連れてこられ、人生で初めてのいじめと差別に遭遇し、それに抵抗する手段として暴力を選び、その果てに犯罪人になって刑務所生活を送ることになりました。いま、暴力を否定する立場にありますが、いじめと差別に対抗するには暴力以外の選択肢があったのかを考えるのが今の私のライフワークともいえます。

 
 
 

著書「怒羅権と私」について

私は怒羅権の創設期からのメンバーです。怒羅権は1980年代の後半に、中国残留孤児の2世や3世によって東京都江戸川区の葛西で結成されました。暴走族時代はその凶暴性から包丁軍団などと呼ばれ、やがて犯罪集団へと変質していきました。現在でも半グレの代表的な存在として裏社会で大きな影響力を持っています。私自身、ヤクザの腕を切り落としたり、窃盗グループを率いて数億円を荒稼ぎしたりと多くの犯罪に手を染めてきました。そして28歳で逮捕され、13年間刑務所に服役することになります。出所した今、なぜこの本を書こうとしたのかというと、自分たちがどのような思いで怒羅権をつくったのかを書き残したいという願望があるためです。犯罪集団へと変質していった怒羅権ですが、結成当初はこのような組織を目指していたわけではありません。日本社会で孤立していた中国残留孤児の子孫たちが生き残るため、自然発生的に生まれた助け合いのための集まりでした。創設に関わった古参メンバーの中には現在の怒羅権の状況を残念に思い、解散させたいという声も存在します。この本によって自分たちのしてきたことを正当化するつもりはありません。自分たちが何者であったのか、なぜ怒羅権という怪物が生まれたのか、そして犯罪者として生きてきた私が服役を終えた今、日本社会をどう捉えているのか。自分自身の半生を振り返ることで、それを記していきたいのです。

『怒羅権と私』より / 彩図社 2021年1月27日発売

 
 
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『怒羅権と私 創設期メンバーの怒りと悲しみの半生』

 

 汪楠によるブログはこちら→

汪楠に聞きました

 
 

※こちらは2000年に逮捕された汪楠が13年の刑期を経て、更正支援を始めた日々、そしてこれからを語ったインタビューをまとめた上記Youtubeからの抜粋テキストです

 

刑務所で文章を書き始めて

自分がこれから13年間刑務所っていうところで過ごすわけだから変化するだろうって、
良い方も悪い方も
良い方は真面目になるかもしれないし
悪い方だと、知能数高い方だから元犯罪のプロフェッショナル達と一緒に13年学んじゃうわけだから
だからどっちに転ぶか分かんなかったんですけど
せめて今の状態を、自分なりに記録しようと思って書き始めたんですよ


一般人との接点・心の変化

あんだけ憎んでた社会が
まあ普通の日本人と接点がなかったから
いじめてくるやつと喧嘩してたら
暴走族、ヤンキーとかと喧嘩するようになって、それが友達になってその頃の自分もどっぷりヤンキーになっちゃって
でマフィアになったり、怒羅権もマフィア化したり
自分もヤクザになったりして
普通の一般人と接点がなかったんですけど
なんだろうね、皮肉にも刑務所に入ってから真面目な人と接点ができて
で、本を送ってくださった御礼じゃないですけど
ちゃんと読みました的な、読書感想文を送り返してたら
それが面白くてさらに送ってくれる人がいて
それを通じて自分の反社会性が、日本に対する恨みつらみが少しづつ取れたみたいで

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更正支援を始めようとしたきっかけ

犯罪することによって家族と疎遠になるんですよ、村八分にされるから
そうすると身内もいない状態で、ただ刑務所の中で死んだロボットのような
起きて、飯食って、働いて、時間になったらチャイム鳴って寝るっていうのは人間としてどうなんだろうなと思って
このまま自分もそうなんですけど
このまま犯罪者のレッテルで終われば、自分は本当に犯罪者で一生終わるんですよね
でそういうおじいちゃん達をもう一回、その過去のことをね思い返してもらって
でだけど自分がなりたかった人間てあるじゃないですか
まあ立派な警察官になりたいって人もいれば
まあいいパパになりたいって人もいて
それを思い出してもらって、人格形成をしたらいいじゃんって
で環境が刑務所にいようが、シャバにいようが、ラーメン屋で働こうが
要はその相手とどう接するかで自分の人格は決まるわけだから
「今無期だから」「今犯罪者だから」「刑務所にいるから」って諦めることなく
なりたい自分になればいいじゃんと思って
それのきっかけを作ればいいと思って、更正支援を始めようと思ったんですよ

本を出版して

今回本を出したから、武勇伝的なんじゃないかって批判されたこともあるんですけど
まあそれも人生の一部だし
そういうのを受刑者に見せたいんですよ
俺ら元々ねワルしてて、クソヤンキーで
でも自分が変わる需要があるから、変わっちゃえば結構楽しいですよって
安い発泡酒でも美味しいしみたいな
そういうメッセージを発信し続けてる

刑務所での読書・本の提供

刑務所に備え付けの官本って本あるんですけど
めっちゃ古いんですよ、古典文学みたいな
川端康成とか
そうすると今流行りの、今の本をベストセラー読みたい
だと買わなきゃいけない、でも買うお金がないみたいな
それを見てきて、ちょっとね
こっちが読書、本を提供できればその人は少なくとも
暇つぶしになるし、喧嘩に巻き込まれないわけだから
喧嘩に巻き込まれないっていうことは、模範囚になれる可能性があって、早く出れるかも
早く出れれば、そんだけ周りに気を使って喧嘩を避けるくらいの心も…心を持てばシャバに出ても、犯罪に関わらないだろうっていうのはやっぱり見てきたから
それを一生懸命今、本を、読書の機会を提供してます
面白いですよ

うれしいこと

この団体をやっててどんどん会員が増えて、働く時間がなくなっちやって
生活が1回崩壊したんですよね、食べ物もないと
でその時にフードバンクっていうホームレスの配るところに行ってもらって食べたりしてたけど手紙、活動つづけたいじゃないですか
何百人会員抱えて文通してるから
その手紙の中に「今困ってね、活動費ないから皆さんあと1ヵ月待ってください」と
「稼いだら送料払えるから、本を送ります」って手紙出したら
「汪さん、靴ありますか?」って。そしたら受刑者からね「私あと10年釈放されないからね、私の靴あげるよ」ってくれたり
「服をね、知り合いが送って来てサイズ合わないから」
「もうこれから10年も使わないから、多分カビだらけになるだろうし」「汪さん良かったら使ってください」って
それ嬉しいですよ

あとやっぱり手紙やり取りしてて、すごいその人の人生に触れるわけだから
少しづつ、受刑者会員が心開いてくれるの分かるんですよね
そういうのは嬉しいですよね

2021年4月7日

 

 汪楠を取り上げて頂いたメディアのご紹介

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東海教育研究所「望星—ぼうせい-」にて、汪楠「刑務所と読書」について2021年4月〜7月まで連載

こちらは2021年7月号 「塀の内外」をつなぐプロジェクト
発売日 2021年6月15日 定価 660円(税込) 「望星」についてはこちら