旧刑務所思い出・G

 

9月も半ばを過ぎたというのに、まだまだ暑い日が続いています。皆様にはいかがお過ごしでしょうか。 
今年の夏も暑いですね。そして長い。熱中症対策で作業は午前だけなんてありがた迷惑な対策が実施されるのですからよっぽどです。
しかし、暑い暑いと言いつつも、昔に比べれば…なんて話もちらほらと。 

私が入所した頃の建物は築50年以上という代物で、窓は横ではなく、押して開けるタイプでした。
鉄の窓枠は錆と歪みで開閉のたびに悲鳴を上げ、なかなか動いてくれません。
舎房は対面舎房なのですが、部屋の向きが東と西で、もちろんカーテンなんてありませんから、朝日と西日が直に入ってきて逃げ場もありません。
しかも、定員8人(10畳)の部屋に10人です。はじめは8人だったのが9人になり、2段ベッドが入って10人に。
さらに、当時は上半身裸でよかったので、計10人の兄ちゃん、おっさん、じいちゃんが10畳にみっしりと…
もう、ね、勘弁してくださいという感じでした。 

そんな環境ですからモメ事も多く、ちょっとした音や笑い声がうるさいとモメ、俺のテリトリーに入ったの、、俺を見て笑ったのとモメ、、
食事中は俺のだけ豆が1粒少ないとまで言い出して…言って恥ずかしくないかと思うのですが、当人達はいたって本気なんですね。(笑)
で、いくら仲裁してもモメてばかりなので、もう好きにしたらと思っていると、急にモメてた同士が手を組んで他の人にかみつき出したりするので、もうワケが分かりません。いやいや、退屈しない日々でした。
よくぞ無事故で過ごせたな・よくキレなかったなと。あの頃の自分を褒めたいです。なんて(笑) 


そんな日々でしたが、賑やかだったのは人間だけではありません。
獄庭ではカラスと猫の一家が丸々太ったネズミを奪いあい、隙あらば弱った個体を襲いあう厳しい生存競争。
夜の舎房の廊下にはコウモリが飛び交うという環境でした。 
虫はもちろんデフォルトです。蚊やハエには悩まされましたが、暑くなると見たこともないような虫がいろいろと湧いてくるんです。
鮮やかな朱色の小さな虫、カラフルなイモムシなどなど。
絶対、刑務所特有の新種の虫がいたはずです。しかし、怖いのはやはり、ムカデやゲジ、そして、Gです。 

夜、ふと目が覚めると視界の端に何やら動くものが…寝呆けまなこを向けると、いるのです。黒い悪魔が。
一瞬で覚醒し撃滅しようとしていると他の人も起き出して大騒ぎに。そうして、皆で追いつめてトドメッ!と意気込むとヤツの反撃が。
そう、飛ぶのです。飛びやがるのです。その姿はまさに悪魔。しかし、なす術もなくけちらされた私達についにヒーローが。
最終兵器オジイ出動です!普段は、歯軋り、イビキ、下の粗相といろいろアレなおじいちゃんですが、さすが戦後を生き抜いてきた強者(ツワモメ)。
黒い悪魔をものともせず、素手で立ち向かい成敗する勇姿はまさにヒーロー。(Gの最後は精神衛生上の問題で自粛させて頂きます。笑) 

しかし、ヒーローはいつの時代も孤独なもの。黒い悪魔を倒してくれたヒーローに誰も近づかない。近づけない。
近づきたくない!Gをテイッ!してポイしたその手をパジャマで拭くな!なぜ手を洗わない⁉感謝と賞賛が一転、悲鳴と非難の嵐に。
なのに、当の本人はぽか~んとして、何を言われているか分かってない。これぞ、おじいのおじいたる所以です。最っ強です。(笑)
そして、ここは刑務所、しかも真夜中ですから、看守さんが飛んで来て怒鳴られて皆でゴメンナサイまでがお約束です。 


あの頃に比べれば今は暑いだけ。部屋は全員独居ですし、小さい虫はいてもGはいません(部屋の中にはですが)。
もちろんコウモリも飛んでません。(笑)うんざりしてたあの日々も、思い返すと懐かしく思えるから不思議なものです。 

なんて思い出話に花を咲かせる近頃ですが、どうやら、申し込んでいた職業訓練に行けるような空気が漂ってきました。
溶接工場の塗装と出荷を1人でやっているのですが、作業のマニュアルを作ってくれと言われ、おや?と思っていたら、引継ぎが始まり、訓練開始日まで2週間を切りました。
不許可の通知もまだ受けておらず、ここまでお膳立てされてやっぱダメだった…なんてことはないでしょう?ないはずです。ない!…ですよね。
もう「いってきます」の挨拶もしちゃいましたし、これでダメだったらもう笑うしかないですね。
移送の告知がないかと毎朝ドキドキですが、こういう時こそ落ち着かないとです。いつも通り、一日一日を大切にしていきたいと思います。 
それでは、最後までお付き合い頂きありがとうございました。無事、訓練に行けたらまた投稿しようと思います。
またお目にかかれますよう祈りつつ。ありがとうございました。 


(俳句) 

・考行の跡 さがすごと墓 洗ふ 

・天高し 逆転サヨナラ ホームラン 

・みえすいた お世辞みたいな 残暑かな 

(短歌) 

・急坂を 一気にペダル漕ぎ抜いて 眺める夕日のごとくに夏は 

・黄昏を森へと変える鳥の影 母と子の影 夕焼けこやけ 

・喉元に抑え宥めしあれこれを呑み込むブラックコーヒー苦し 


令和7年9月17日 


A360さんの投稿

 
 

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