壁の中での壁作り/職業訓練の思い出・3
すっかり秋めいてきました。皆さんいかがお過しでしょうか?今回は、高松刑務所での訓練についてです。
最後までお付き合い頂ければ幸いです。
訓練は内装施工科(左官)と建築科があり、各4人ずつの8人で同じ工場で訓練を共にします。
私は内装科ですが、訓練のスケジュールは、(4月末)訓練開始 (7月)内装学科試験 (8月)内装実技試験 (9~11月)ビジネススキル(エクセル&ワード)、小型建築機械特別教育 (12月)建築学科試験 (1月)建築実技試験 (1~2月)卒業作品製作 (3月)石膏ボード・クロス張り となります。
内装の訓練ですが、縦180cm×横90cmくらいの練習台が2つ(土壁用と土壁&モルタル用)あり、下塗り、中塗り、仕上げ塗り(土壁はしっくい仕上げ)と乾燥具合を見ながら、とにかく塗って剥がして塗っての繰り返しです。
TVで、八〇子リフォームのヒ〇ミさんは簡単にやってるように見えますが、実際は塗った端から剥がれてばかり。そもそもコテにも乗ってくれません。
それでも、一日中やっていると少しずつ慣れてきて、一度できるようになると、なぜこんなことができなかったのか?となり、段々調子にのってきます。が、そこで職人さんが講師として来てくれて、本物の職人技を見て鼻っ柱を折られる。これが毎年のお約束のようです。
そうこうしているうちに試験となりますが、始めの不安はなんだったのか?と正直拍子抜けするくらいでした。
試験は、内側に段差がある箱(縦50cm×横80cm×高さ10cmくらい)の底と内壁を規定の厚みで塗るというもので、まじめに訓練していれば何の問題もなく、4ケ月という短期間にも納得でした。
ということで試験も無事終わったのですが、しかし、この訓練の本番はこれからです。
試験という一大目標が終わったのに、訓練期間はまだ8ケ月も残っています。
ビジネススキル等息抜きもありますが、メインは壁塗り。この頃になると始めは40~50分かかっていたのが15分ほどで塗れるようになっているので、乾燥させる暇もなく、塗って剥がし塗って剥がしのエンドレス… だらけようと思えばいくらでもだらけられるこの時期が一番きつい時期でした。
しかし、それも建築科の試験が終わるまで。1月からは、いよいよこの訓練の目玉、卒業作品の製作です!
他施設は、模型等のようですが、高松は実物大です。建築科が建物を建て、内装科が外壁を仕上げます。
練習台を塗るのとはまったく違い、軒下など狭い場所や広い面を塗る大変さなど、実物でしか分からないことを学べてとても為になりました。
ちなみに、私たちの代のコンセプトは山小屋風だったのですが、外壁は内装科が仕上げるため日本家屋風(しっくい&モルタル)で、室内は山小屋風というなかなか独創的なものになりました。(笑)
そうして建物ができたら、内装の職人さんがきて、石膏ボード&クロス張りを教えてもらい終了となります。
この訓練を通して、やっぱり自分は「ものづくり」が好きだと改めて気付き、また、目標を持つことの大切さ、うまくいかない時こそ一度立ち止まって、落ち着いて自分と向き合うことの大切さを学びました。
これからもまだまだ先は長いですが、将来に目標を持って建築や電気工事の訓練を目指します。
その時にはまた投稿しますので、読んで頂ければありがたいです。
それでは、最後までお付き合い頂きありがとうございました。もう秋も残り僅かですが、皆さまに恵み多きことを祈らせて頂きます。
P.S. ここからは訓練以外の感想です。訓練中、高齢者工場の舎房配食もしていたのですが、高松は類犯の常連さんばかり。
ということは、それなりにお年も召しています。
配食終わったのに「まだ入ってない」という方、ゴミが出てない(机の上の置きっぱなし)のに「もう出した!」を繰り返し、最後は食器孔に叩き付ける方(次の日からゴミは残飯に刺して出すように…)、配食中にう〇こが漏れたという方などなど。もちろん全員ではありません。
一部の方だけですが、工場に出れる人でこれなら、出れない人はどうなのだろうと考えると…
刑務所で年を取る、刑務所でしか生きられなくなることのリアルを見て、感じて、失礼ですが、こうはなりたくない、なってはいけないと、二度と罪を犯さないと、固く固く心の底から決意しました。
<俳句>
・ 白線や運動会の熱気まだ
・ 稲妻や夜空の境界線さだめ
・ ため息を刻む秒針夜長し
・ キコキコと祖父の自転車秋の暮
・ カボチャコロッケ「おかずだ」いいや「おやつだ」と
<短歌>
・ 名物も名所もなきを嘆けども嗚呼ふるさとの夜の虫の音
・ せめて葱くらい散らししラーメンを鍋より食いし恋しき日々よ
・ また出せぬ手紙書く手の止まりたる窓には高く高く秋空
・ 真実は人の数だけ事実とはひとつなりけり数式美しき
・ 一日を終へて一息つくやうに小さな声で啼くなよ烏
R6年11月4日
すっかり秋めいてきました。皆さんいかがお過しでしょうか?今回は、高松刑務所での訓練についてです。最後までお付き合い頂ければ幸いです。 訓練は内装施工科(左官)と建築科があり、各4人ずつの8人で同じ工場・・