ハバカリながらもコンニチハ。A325です。今回は我々チョーエキのメインイベントである日々のオツトメ、刑務作業（獄中労働）について。

「懲役刑」・・・文字通り懲罰として労役（労働）を科す刑罰。ムショにブチ込まれる目的はこのオツトメにある。
誰でも出来る紙折りやボールペンの組み立てのような軽作業からシャバで売ってる作業着などを作る洋裁、ムショの中で「花形」と呼ばれる（呼ばない人も多いが・・・）木工や溶接、「エリート」と呼ばれる（実際はポンコツも多いが・・・）印刷工場、それに図書・統計をはじめとした経理工場。
なかには刑務所製品を作る工場などもある。
割とヒット商品が多く、横浜刑務所では製麺工場で「横浜刑務所で作ったパスタ」などを作っていて、割高にもかかわらずよく売れているらしい。（但し俺ら受刑者はその麺を口にすることなく、給食で出てたソフト麺を食べている）
他の刑務所では「お守り」などを作るところもあり、A325もその昔「こんなの買っても御利益ねえ！」と思いながら作っていた。

ムショに入って、どの工場に配役されるかは、はっきり言って「運」。
ムショに入ると「能力テスト」「学力テスト」などをやるが、その結果通りになってないのは一目瞭然。
考えればすぐ分かることだが、経理作業（統計や調理・洗濯など）の欠員が増えれば機能不全になる。
使えるヤツを回したくても、そんなに都合の良い人材が入ってくる訳ではない。
必然的にポンコツでも回すしかなくなる。たまに経理工場で規律違反をした奴が一般工場に回ってくるが、「何でこんな奴が？」とよく思う。

ちなみに「花形」の木工や溶接などの「立ち仕事」（ほとんどの刑務作業が座ってやる仕事）はメシが多かったり「報奨金」（後で説明）がちょっとだけ多かったりする。一方で誰でも出来る紙折りやボールペンの組み立てなどをやる、通称「モタコウ」（モタモタした奴でもできる仕事の工場、といった意味）はメシも報奨金もあまり良くない。

A325は所内の「溶接科」の職業訓練に、苦節8年がかりで選ばれて行ったものの、そこで職員の不法行為を追求したためにわずか半年程度で不正行為をデッチ上げられ、見せしめのように「モタコウ」に飛ばされた。
飛ばされた怒りを黒いオーラに変えてコメコメしながら紙袋を折り、縁起物の熊手のパーツを山のように作っていた。
（手にした人にはちょっと申し訳ないが・・・。でもイイ仕事をしましたヨ！）
ついでに報奨金は月1万2,000円くらいから月2,200円まで下がった。まぁ、ムショの中でもこういうのはそんなに珍しくない。
ある意味、シャバのほうがエグいのでは・・・と思う。

この刑務作業、言ってしまえば「国による合法的な労働力の搾取」。
ネットや他のプリズンライターも書いているとおり、「作業報奨金」と呼ばれる賃金が出るものの、先に書いたとおり駆け出しは時給10円以下。
1番上の「1等工」になるまで軽く3年以上かかる。
それでも時給は基本給50円程度。（作業によっては危険手当が付いたり、担当の腹1つで割増が付くこともある。）
横浜刑務所は他の刑務所と比べて報奨金が悪く、月1万円を超えるのは10人ほどしかいない。

よく「チョーエキは税金でメシを食っている」と思われがちだが、刑務所の処遇を研究している人の本を読むと、受刑者が労働で稼ぎ出した分でそれなりの黒字が出ているらしい。まぁ、有り得ないくらい低い賃金で、生きる為に最低限のメシしか食わせないんだから、当然そうなると思う。

最後に、個人的な意見。

少し前に話題となった「裏金問題」。また「非正規雇用」「外国人労働者」そして「獄中労働」。
これらは全てつながりがあると思っている。まず「裏金」だが、源資を辿れば「企業献金」だ。
「非正規・外国人」は企業が人件費を抑えられる労働力を手に入れるために国が後押しした制度。
ムショの仕事の多くは割と名の知れた企業の孫受けのような会社からの仕事だ。
紙折りだと、8割は一度は見聞きした店舗のものばかりだ。

来年6月1日からは既存の懲役刑が廃止される。
しかし新体勢に移行しても、これまで通り刑務作業はあるらしい。噂では現在鳥取刑務所で試験運用をしているらしいが、作業はそのままと聞いている。
国としても、受刑者の労働力を手放し、100%税金で養おうなどと考えないだろう。
極論・異論の類になるかも知れないが、「非正規・外国人」の待遇が改善されない限り、ムショの中も変わらないと思う。

立場の弱い者が声を挙げるのは難しい。獄中でA325も身をもって体験している。
だからこそシャバで当事者の「非正規・外国人」の方々には声を挙げて欲しいと思う。

世の中を少しでも良くするために、共に頑張ろう！
それでは今回はこのへんで。次回もよろしくお願いします！

2024/8/1