塀の中で見た怖いモノとは‼️
以前も自身の生い立ちについて話しましたが、私は幼少期に受けた親からの暴力は、愛情表現とイコールだと信じていたので「親の暴力を受けたことがない」と言う人がいると、それは育児放棄だと思い込み、哀れんですらいました。
風呂場で力まかせに湯の中に沈められ、溺れ死ぬかと思ったこともあるし、エルメスの硬いベルトで叩かれた時はトラウマ級の激痛で、この時ばかりは親が鬼に見えることもありました。
それでも、顔の腫れやアザを周りの大人に咎(とが)められても「階段から落ちた」「転んだ」と不自然な嘘をついて、必死に親を庇ってたんです。
さすがに今では「まともじゃなかったな」と理論的にもわかるのですが、当時の幼い私にとってはそれだけ親の存在がすべてだったんですよね。
この嘆かわしい恐怖体験のせいで私は今でも、エルメス好きの女性が苦手です…(苦笑)
恐怖体験といえばもうひとつ。
夏のとある深夜、私は大きな交通事故を起こしてしまいました。 双方の車両は大破。
事故原因は、私が速度を出し過ぎたせいです。
そしてこの件をきっかけに、私の悪事が諸々捲られて、逮捕・起訴に至り、それは12月5日、第2回公判・口頭弁論で起きました。
刑務官に付き添われ出廷した私は、場違いな気配を傍聴席に感じたのです。
視線を向けると、そこには他の傍聴人に紛れて、ミニスカサンタのコスプレをした中年男性が座っているではありませんか!(これ本当の話です)
しかも、よく見ると濃厚な青ひげに眉墨をした厳ついサンタ。
そして何より、ミニスカから覗く脚が息を吞むほど綺麗だったために、私は放心状態となり、その後の検察の被告人質問も上の空…。
「どこで着替えたのか、目的は何なのか」そして「なぜ脚があんなに美しいのか」。
そのことばかりが頭の中を占めていたのです。
更に、こちらの動揺を知ってか知らずか、神妙な表情をする不気味なサンタにいたたまれなくなり、私は思わず「裁判長、傍聴席に異議あり!」と叫び出しそうになりました。
結局、サンタから特別な贈り物もなく、裁判も散々な結果でした…。
その2か月後、私は性懲りもなくこうして古巣の岐阜刑に舞い戻ってきたわけです。
当然、顔見知りの古参受刑者達に「おかえりなさいませ~」なんて満面の笑顔で迎えられ、「こんなメイドカフェが社会にあったら嫌だな」と心の中で呟く(苦笑) ただ驚いたのは、前回服役した時より職員の言葉遣いが丁寧だったこと。
最初はこちらがモジモジしてしまうほどの「さん」付けも今でこそ慣れましたが。
昔のように刑務官から「貴様ぁ~前だけ見て歩け~」などと怒鳴られるようなことは皆無で、現在ではどんな受刑者に対しても物腰が柔らかくなりましたね。
また刑務所独特の隠語も次々と廃止され、例えばメリヤス→防寒用下着、ガリ→理髪、ガテ→手紙といった具合で、塀の中も時代の流れにあわせアップデートしている訳です。
そして入浴中には、リンスやシェービングジェルも使えるようになり、ずいぶん快適になりました。
因みに、入浴直前は脱衣場で全裸になって待機するのですが、各々の背に彫られた色鮮やかな入れ墨を眺めていると、まるで芸術絵画の展示会に来ているような錯覚を起こします。
しかし、そんな個性的な和彫り群に見惚れていたら、私の目の前にある背中、ムチを振るう鬼の入れ墨がエルメスのベルトを振り回す母親に見えて、思わず悲鳴を上げそうになりました…。
そして怯える視線を感じたのか、怪訝そうにこちらを振り返る顔を見て、私はついに絶叫してしまいます。
なぜなら、振り向いたその顔が青ひげに眉墨という傍聴席にいたあの厳ついサンタだったから…。
2025.7.7
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以前も自身の生い立ちについて話しましたが、私は幼少期に受けた親からの暴力は、愛情表現とイコールだと信じていたので「親の暴力を受けたことがない」と言う人がいると、それは育児放棄だと思い込み、哀れんですら ・・