変わり行く刑務所+短歌

こんにちは。 しばらくぶりの投稿となりましたが、どうぞよろしくお願いします。 
先日、朝日新聞へプリズンライターズが大きく取り上げられたとのニュースが届きましたが、私も含めメンバー皆よろこんでいることでしょう。 
私たちのために始めてくれてから３年であのような形で社会へ届けてくれるなんて、サユリさんの人脈と行動力のすごさには本当に頭が下がります。 
これがきっかけとなり、一般の方々が受刑者や刑務所に興味を持ってくれたら、きっと更生の道のりへの選択肢が増えると思うんですよ。 
犯罪者を理解してくれとまでは言いませんが、それでも見る目がほんの少しは変わるのかもしれない。そうなれば素晴らしいなと思いました。 

さて、私のいる施設では先月ようやく職員のマスクも外れ、ここ何年かの新しい職員が初めて素顔を見せるので、へえこういう顔だったのかと思ったりしますよ。 まだ黙食は続いていますけどね。 
他の施設ではどうなのでしょうか。ていうかまだ社会でもやっているのでしょうか。 

ここでも少し前に拘禁刑が始まる関係で作業目標の設定、という指導が行われました。といっても、あらかじめ用意された項目を選択するものが多く、あまり自主性や積極性を感じるものではないな⋯⋯という印象を受けましたが、きっと始まったばかりなので作る側も模索中なのでしょうね。 
これからどう変わるのか? と、いろいろ質問している人もいましたが、結局のところ私たち受刑者が"懲役刑"であるため基本的には今までとほぼ変わらないみたいですね。作業的には。 
ただ、他の工場の一部では交談許可を取らず、自由に話し合いながら共同作業を行える試みがなされているところもあるらしく、それは社会の職場に近い環境になるのでしょうから社会復帰に向けた訓練にもなるし、効率も上がるだろうし、とても良いことですよね。 
施設全体が早くそうなる日が来ることを願っています。 

では教育や更生プログラムについては今後どうなるのか? ということが私は気になるのですが、こちらもまだまだ初期段階の域を出ていないとのことなので、どれもまだ様子を見ながら少しずつということなのでしょう。 
ただ再犯率およそ50%という数字が出ている以上、2人に1人はまた罪を犯しているわけで、でもそれって実はけっこうすごいことですよね。 
もちろん最終的には本人の責任ですが、 "私はもう二度と罪など犯さない"とほとんどの人が思いながら出所しているはずなのに、悪い条件がいろいろと重なってしまったのか、どうしてもそうせざるを得ない状況に追いこまれてしまったのか、理由は人それぞれなのでしょうが、再びこちらの世界に戻って来る人が大多数いるのは事実なんですよね。  

刑務所なんて二度とごめんだね、と誰もが思ったはずなのに⋯⋯。 
"私だってその可能性はゼロじゃないんだ"ということを強く意識しながら未来の自分を想像することが多くなった気がします。  
とくに私たち無期の人間は仮釈後も罪どころか尊守事項 (人によって内容が異なりますが、飲酒禁止・ギャンブル禁止・保護司への連絡 etc)をきちんと守らないと"尊守事項違反"で元いた刑務所に戻され、また何年も務めなければならなくなりますし、実際ここにも何人かいます。 
だから、きっと私たちが想像している何倍も現実は厳しいもので、常に自覚を持ち続けていないとすぐに躓いてしまうのではないかと思います。 
皆さんはどのようにお考えでしょうか。 

更生は一人では不可能、という意見には私もその通りだと思っていまして、反省をくり返し行っている段階でどんな人と出会うのか、どのように価値感を変えることができるのか、あるいはそのきっかけを作ってくれるのか、そのあたりがとても重要ですよね。 
何か良いアドバイスをくれたり導いてくれればベストだけど、そうじゃなくて、ただ話しを聞いてくれるだけでも良い、手紙を書く相手になってくれたら嬉しいことだってあるので、そういった人が近く(社会も含めて)にいれば大切にしたいですよね。 
その存在は私たちにとって犯罪への抑止力になるはずです。 
今日は短歌をメインに投稿いたしますのでどうぞよろしく。 

・本就寝時刻になりて忙しなく動き始める雑居のありぬ 

・新しく追加されたる購入品とりあへず買ふ囚ばかりゐて 

・宮本の宮部みゆきを読み終へるころあうわるる湯丁二枚 

・応援団リレー縄跳び菓子飲料個々に楽しむ大運動会 

・給付金届くそばから使ふ囚遠足の菓子選ぶ子の如 

・注目の拘禁刑の記事読みて会話の減りぬ食卓のある 

・目を合はすだけで通じるやうになる人屋で学ぶ人情の機微 

・総義歯を作ってもらひし老囚の笑顔の増えし休息時間 

・三枚の畳を舐める大西日 

・戦後すぐ戦前となる夏の雲 

2025.6.14 

A294さんの投稿

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