俳句33句+汪楠への手紙
汪さん
厳しい冬もようやく終わりが見え、春らしい陽射しとなってきた今日この頃、汪さんとスタッフの皆様におかれましては元気にお過ごしでしょうか。 先日はお手紙をいただき有難うございました。
やはり受刑生活においての楽しみのなかで、外部からの手紙・差し入れというのは何物にも代え難い貴重なものであり、とても嬉しいものですね。
汪さんのお手紙に書かれている近況を読みながら、面白いな~楽しそうだな~、そしてやっぱり社会で生きてゆくのは大変なんだな~と、いろいろな思いで汪さんのことを知ってゆくのですが、前科というハンデやこのコロナの状況を乗り越えてバイタリティにあふれる毎日を送る汪さんは、本当に素晴らしいな~と元気をもらいます。
ただ今回は逮捕という文字があり驚きましたが、無事で何より、良かったですね・・・。
相変わらず、出所者の面倒をみては大変なことになっているとのこと、汪さんのような方がいてくれるということにより、多くの社会復帰者が救われているのも事実ですからね。私たちにとっては希望の一つで、裏切ってしまう者の気持ちは理解できません。
さて、こちらの近況を少し書きますと、現在ここでは職員、収容者ともに連日の感染が続き、工場には出ず、居室にて待機する生活が続いています。(3/15現在)
今年に入ってからは閉鎖・解除の繰り返しで、むしろ1・2・3月のうちで工場を止められた日の方が多いですね。 ほとんどの受刑者がワクチンを2度接種しているので、重症化は多分しないのでしょうが、それでも不安はあります。
同封してくださったプリズンライターズですが、私は趣味の一つとして俳句・短歌がありますので、拙い作品ではありますが、いくつか投稿したいと思います。
まだ始めてから日も浅く、文法や言葉の使い方に間違いがあるかもしれませんが、それも含めて感想やご指摘をいただけたらとても有難いです。 今回は俳句を33句同封しますのでよろしくお願いします。
ここで発行されている所内紙(以前は毎月でしたが今は年に4回)に以前投稿し、掲載された作品もありますので重複となってしまうものもありますが、どうかご容赦ください。
いつも本をランダムに送っていただきますが、とても有難いです。去年送っていただいたリストからの本もすべて読み終わりましたので、また今度新しいリストからリクエストしたいと思います。
今回はプリズンライターズへ興味が湧いたので、とりあえず投句してみよう!と思いお手紙を差し上げましたが、現在どのような作品や意見が掲載されているのかも気になりますね。 また何か情報をいただけたら幸いに思います。
それでは、まだ気温の低い日もありますので、くれぐれも御身体を大切になさって下さいね。
汪さん、スタッフの皆様の健康を願っております。
P.S.
汪さんのお手紙にiPhoneやYouTubeのことがよく書かれており、社会不在が20年続く私としてはいまいちピンと来ないのですが、その流行度や影響力、一歩間違えれば身の破滅にもつながりかねないその存在にコワイな~と思うと同時に、ぜひ使ってみたいな~とも思いました。最近またスマホでも¥1-のものがあるそうですが、それにしても¥100,000-を越えるものがけっこうあり、とても高価だな・・・と。新機種も次から次へとすぐに出ますしね。 また面白い話が聞けることを楽しみに待っております。
元日や取り留めのなき文しるす
獄窓に近寄りがたし雪つもる
念入りに箸箱洗ふ大晦日
起きがけに重たくなりし懐炉もむ
除夜の音を聴かざる年もありにけり
底冷えの夜に知りたる膝の傷
皹(あかぎれ)の指先のばす点呼かな
鍵盤の軽き白色春うらゝ
しんしんとフィンランディアの如き朝
風のなか居住まひ正すふきのとう
ハモニカの鈍く光りて冴え返る
鯉のぼり泳がぬ鯉もありにけり
我が罪を咎めるやうな春の雷
亡き父を思ひ出したる母の日に
独房の夜を厭わぬ守宮かな
映写機のフィルムの如し蟻の列
刑庭に競ひ合ひたる蝉のこゑ
片陰に入りて動かじ猫をりて
あぢさいに呼ばれたやうな雨の雲
発つ鳥をそっと見守る案山子かな
やはらかき腹を見せたる祈り虫
どんぐりを拾ひて一歩また一歩
一杯の水を吞み干す原爆忌
かりがねのこゑに触れたし日本海
忘らるゝ手袋温しベンチかな
道場の竹刀振る音寒稽古
獄庭を独り占めたし日向ぼこ
だまされるこゝろづもりや四月馬鹿
遠足の列を乱すや牛の糞
独房で湯呑み磨きて寒戻る
軽トラの荷台登りて蜜柑山
小春日に目覚まし止める猫をりて
驚くや春分に見る不精髭
2022 3/15
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