唯一の楽しみ・受刑者のGW

G.Wも今日が最終日。皆さんはどのように過ごされたでしょうか。
私は例年通り三畳一間(トイレ付き)の舎房に閉じ込められ過ごしました。そう書くとすごく淋しくつまらない印象にとられてしまいますが、私にとっては最高のG.Wでした。 
TVは観られるし、ラジオも聴ける、好きな本も読めて筋トレもし、好きな事が出来た充実した4日間であり、舎房に閉じ込められと、どこにも行っていないような事を書きましたが、こどもの日に入浴場に行き、入浴をしました。 

これは我々にとっては特別な事で、G.Wの唯一のお出掛けです。基本、休日に舎房から出る事はありません。
我々は3日以上入浴させない事が許されていないみたいで、3日以上休みが続く場合は休日でも入浴日が設けられます。
平日は各工場で作業をしている為、騒音が響き渡る刑廊も、休日となれば、静寂に包まれ、それが非日常に感じられます。 


TVを付けると今話題の大阪、関西万博、各観光地の中継をどのチャンネルでもやっているので、いつのまにか自分も行った気分になれます。 
G.W前には、「ほんにかえるプロジェクト」からも無償本の差し入れもあり、G.Wに夢中になって読ませて頂きました。
G.Wの楽しみといえばやっぱり祝日に出される特別食(お菓子)です。 

3日(憲法記念日)にはロールケーキ。 
4日(みどりの日)には黒糖蒸しパン。 
5日(こどもの日)にはコーヒーゼリーと、普段は食べる事が無い甘味に舌鼓を打ち、最高の時間を過ごせました。
ちなみにどれも数年は食べていないもので、最後に食べたのがいつか思い出せないくらいです。
祝日には映画(DVD録画)の放送もあり、我々が退屈しないようにと配慮がされています。 

一般的に刑務所の生活は、"辛い、厳しい" とイメージを持たれてますが、「それは自分がどう感じるかの感じ方だ」と最近思えるようになりました。 
「辛い」と言う字一本足せば「幸」の字になるように、ポジティブに捉えるか、ネガティブに捉えるかは自分次第です。
4日間も舎房に閉じ込められ、どこにも行けないと書けば、不自由で辛いイメージを与えてしまいますが、しかし舎房で誰にも邪魔されず、自分が好きな事、やらねばならぬ事、自己研鑽に没頭できます。 
それが社会では、スマホが鳴ったり、家事をしたり、やる事に追われ、誰にも邪魔されず何かに没頭する時間や場所を作るのはとても難しいと思います。 
「あれがしたい、あそこに行きたい.これがほしい、あれ食べたい」と思う程、欲を出せば出すほど、それが手に入らないと苦しくなり不満がうまれますが、「今あるもの、出来る事で充分」と思えると楽しくなり満足になります。 

以前の私も欲にまみれ、足りないものばかりに目がゆき不満ばかりで、それ由に犯罪に手を染め、今刑務所に居ます。
そんな私が今の境地に至るまでに15年の年月が掛かりました。 
現在社会では物価高に多くの人が苦しんでいます。特に米の高騰に歯止めがかからず、米を買えずにいる人が増えているそうです。
そんな中、我々は、出して頂いた物を食べていますが、米は毎日食べておりとても恵まれています。
これを、当たり前と思う事なく感謝し、大変おいしく頂いています。 


犯罪を犯し、多くの人に迷惑を掛けた私が、何不自由のない生活に恵まれ、辛いなんか言えるものでしょうか。 
しかしそんな私に1つだけ不満というか、辛い事がありました。 
休日の夕飯の時間が16時ととても早く、翌日の朝食が8時となると、明け方に空腹で目が覚め、ずっと腹が鳴り時々気持ち悪くなります。 
今、刑務所では社会基準の生活に近づける改革をしているところですが、社会で16時に夕飯を食べる家庭など昭和でもめずらしくて、令和の今ではほぼいないでしょう。完全に刑務所の都合だと不満に思ってました。 
そんな矢先、雑誌に「16時間断食が健康になる」と書いてありました。人間1日3食だと胃や腸が常に働いている状態で疲弊しているらしく、16時間断食で胃を空にする事で、胃や腸を休ませる事で健康になると。
そういわれると、ここ10年でカゼや病気をした事も、1、2回ですし、コロナにも感染しませんでした。
16時間何も食べられないのは辛いですが、それが健康になっているのなら有難い事ですし、不満に思わなくなりました。 


恐らく今の考え方は社会に居たら、中々得る事が難しいと思います。
それは自由があり、物があり何でもあるからです。「足るを知る」事で人は幸せを感じれると実感できた事で、心にゆとりが出来、人にも優しくなれた気もします。この事は今後忘れる事なく、謙虚でいる事が健全な社会復帰をする為には必要不可欠です。 
このG.W私はとても幸せでした。”どんな環境でもその状況をどう捉えるかは自分次第”と学びました。
幸せかどうかは自分で決められる。又、幸せかどうかは自分で決められるが、“その環境、出来事は他人が与えてくれるものだ”と気付きました。 


今回、読書に夢中になれたのも「ほんにかえるプロジェクト」が本を差し入れてくれたからですし、特別食を食べられたのも作ってくれた人がいて、官が出してくれたからで、誰かの支えがあり、与えてくれる人がいるからこそ、この幸せを感じる事が出来ました。 
我々は社会の人に比べると自分で出来る事が限られています。なので人の助けなくして生活出来ない事が多々あります。
人は一人では生きられない事を身を持って体感し、だから私も自分が出来る事を人にもして、何かを与えられるような人間になりたい。
そう思えるようになったのも周りの人のおかげです。有難う御座いました。 
さあ、幸せで楽しかったG.Wも終わりです。明日からまた刑務作業に精を出します。明日はどんな幸せがあるか今から楽しみです。 

 

2025年5月12日 

 

A23さんの投稿

 

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