前略 塀の中から・死を想え
2、3ヶ月前の出来事です。救急車騒ぎがありました。夜眠っていると職員が、 「おい、大丈夫か、しっかりしろ」と、誰かに言っている声で目を覚ましました。何事かと思っていると、大勢の職員が走ってくる足音が響き近くの舎房の扉を開ける音がしたかと思ったら、怒号とAEDのガイダンス音が響き渡り、緊迫した空気が伝わってきました。救急搬送された後も、しばらくは眠れませんでした。どうやら自殺だったようです。
そして先日、雑居房(共同室)で受刑者が同室受刑者を殺める事件が起こりました。刑務所では同囚間のトラブルや喧嘩は日常茶飯事でありますが、こんな事件は初めてです。NHKニュースで報道があったようですが、詳しい事は何も分かりません。
この2つの出来事で私は「メメント・モリ」(注1)と言う言葉を、強く意識するようになりました。
我々は日々出所する日を夢見て、今か、今かと待ちわびています。
当然のようにその日は来るものだと信じ、出たら「何食べよう、あそこに行こう、誰と会おう」と妄想を繰り返しています。塀の中の人間はみんな、そうだと思います。しかし、その日が確実に来る保障は無いのだと思い知らされました。
私はとにかく文句、愚痴が多い。
刑務所内では毎日嫌な事、気に入らない事、むかつく事、悲しい事など山ほどありますが、生きられているからこそそういった感情が持てる。
又、明日死ぬかもしれない、そんな今日をイライラし暗い気持ちで過ごし愚痴、文句を言いながら終わるなんて、すごくもったいないし、バカバカしくもなる。そう考えるうちに気持ちが切り替わり、ポジティブになってきました。
私は社会では当たり前の事でも、ここでは感謝するぐらい有難い事となり、そんな中、“有る事が難しいから有難う”との語源を知り、”有難う“が好きになり言うようになりました。昔はなんか照れくさくて口に出来なかったけど、今は身近な家族にも言いますし、伝えます。
今回の件で警備の強化など対策をしているようですが、もっと必要なのは、”職員との信頼関係を築き、面談や相談ができる環境を作る事”だと思います。
うわさによると、この雑居ではずっと険悪な空気で、職員はそれを察知していたとか・・・
受刑者は立派な大人でトラブルなどは個々で解決するのが普通だと思われますが、やはり、認知の歪みや暴力的思考などがある為に事件を起こしている訳で、当事者間では中々解決できません。
全てのトラブルに関与するのは難しいのは理解しているものの、職員ももう少し親身になって接してほしい時もあります。
そうしてくれると受刑者も人間ですから情が移り、 「この人の言う事はきこう、心配迷惑を掛けないようにしよう」と思い、改心するきっかけになりますし、我々が改心をし、面目に生活をするようになったほうが職員も楽になるでしょう。
拘禁刑となり、上から言われているのか、昔と比べ職員の接し方は丁寧になりましたが、距離を感じるようになりました。
我々に対して敬語を使ったり、さん付けで呼んだりする事が矯正指導として本当に大切な事なのか?私はそうは思いません。
私が望む矯正指導は相手の事を考え、思い遣りを持って、優しく時に厳しく接する愛情、信頼です。
人から愛情を受けたら、自分も人に愛情を与えたいと思いますもの。
所内では愛情に触れる事があまりないので、心が荒み他人を思い遣れず、自分の事ばかりになってしまうし、人の為に何かをしてあげる事がタブーで懲罰の対象になる事が多い事からも、自分さえ良ければいいと自分本位になってしまう。
そもそも人に優しくされた事がない人もいるので、優しくするのが分らない人もいます。
刑務所を変えられるのは、社会の声であり、世論しかありません。我々は受刑生活を楽にしてほしいとかではなく、罪を償い、真っ当な人間になれる様に指導、支援をしてほしいのです。
それは、カウンセリングや教育で、閉じ込めて罰を与える処遇では、社会復帰は厳しく社会でやっていけなくなる。
受刑者の中には自分との向き合い方や見つめ直し方が分らず、何を改善し、どう努力したらいいのか悩む人も多く、更生の一歩が中々歩めない人もいます。
その結果が再犯率に表れています。教育重視の処遇にシフトチェンジした今だからこそ、当事者の声を少しは知ってほしいと思っています。
という私も更生の道を歩み始めたばかりで、暗中模索の毎日です。
行動しなければ何も変らないと頭では理解しているものの、恐怖や恥、プライドから一歩が踏み出せず、それが致命的なロスとなり後悔した事も多くあり、「行動する事」それが今の課題です。 人の命を奪った私がこんな事を書くのは、大変おこがましく批判されて当然ですが、これからも日々感謝して贖罪の道を一歩ずつ歩んで行きたいと思います。
(注1) ラテン語の成句で「死を想え」「死を忘るるなかれ」という意味。
A23さんの投稿
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2、3ヶ月前の出来事です。救急車騒ぎがありました。夜眠っていると職員が、 「おい、大丈夫か、しっかりしろ」と、誰かに言っている声で目を覚ましました。何事かと思っていると、大勢の職員が走ってくる足音が響・・