本と宇宙人になったカエル・書評 Vol.7「夕日の道を北へゆけ」
こんにちは!社会ではやっとコロナ禍での行動制限などが無くなり、街や行楽地など色々な所が賑やかになって来ているのでしょうか?舎房の中から外を眺めると遮蔽板に覆われており、外の風景は殆ど見えないのですが僅か数センチの隙間に目を凝らせば、そこには娑婆の景色が広がっており車や人まで見えるのです。
でも、社会の賑わいは感じとれずマスクが外せない生活をしている我々にとっては、今ひとつピンと来ないところでしょうか?
勿論、刑務所の中は娑婆の賑わいなど感じとれない程、静寂で穏やかな日常が続いていますよ。
前回の投稿から少し間があきました。久し振りとなりますが別に何か事故を起こした(規律違反)とか懲罰を受けていたとかではありません。
ただ、私の父や友人が病気になったことで、なかなか投稿のために手紙の枠がとれなかったのが原因です。
社会にいれば見舞いにも行けるし、何か力になることも出来る。
でも刑務所の中からでは手紙を書く他何も出来ず苦しい思いをしました。これが罰なんだなって実感しました。
こんな事を言うと反感を抱かれるかもしれませんが、“住めば都”という言葉があるように不自由な生活、刑務所生活というのも慣れるものです。
勿論自由のない生活は嫌ですし、自由を奪われるのが己に与えられた罰だと思っていたのですが、本当は自由を奪い拘禁されることなんかより、もっと違うところに罰という言葉の本質があったのだと痛いほど気付かされました。
坂本冬美の“夜桜お七”の唄の中に、“いつまで待っても来ぬ人と死んだ人とは同じこと”というフレーズがありますが、その通りなんですよね。
刑務所にいては“無”なんです。大事な人に何かあった時、何も出来ない、してやれない、言葉さえかけてやれないんです。勿論、そんなことは始めから分かっていた筈なのに。これが罰なんだなって反省しました。
“癌”だけに“ガーン”なんて笑えない自虐ネタをもって気分を変えます。
今回少し暗い投稿になってしまいましたが、この場をかりて、どうしても伝えたい事があります。
こんな、どうしようもない犯罪者の私の投稿を見てくれ、コメントをくれるだけでも大変嬉しく感謝しているのですが、PJの方から、何件かの募金があったことを知らされデポジットとして受け取りました。
どなたからのものかは全く判りませんが、本当にありがとうございました。
このような刑務所、ましてや出口の見えない無期懲役という生活の中ですが、これからも腐らず前を向いて歩いて行こうと大きな活力を戴きました。
こんな投稿、書評で申し訳ないですが、これからもまた書かせていただきます。重ねて、ありがとうございました。
読んでくれた方にも、お礼申し上げます!
「 夕日の道を北へゆけ」 ジャニーン・カミンズ
物語の冒頭から銃弾が飛びかい、親類の誕生日を祝う楽しいはずのバーベキューが一転悪夢と化す。
メキシコの観光都市として有名なアカプルコで書店を営むリディアだが、新聞記者である夫が書いた麻薬密売組織(カルテル)に関する記事によって親類16人が一度に皆殺しにされたのだ。
しかし、偶然にもバスルームにいたリディアと8歳の息子ルカだけが難を逃れる事が出来たが、そこは生温い日本ではない。世界で最もジャーナリストの死亡率が高く、全国的な殺人率は最高記録にあり、こうした殺人の被害者は誰であれカルテルが刑事責任を問われることの少ないメキシコだ。救助を求めたはずの警察にもカルテルの息がかかっており、たった1人残された息子ルカを守るためには誰ひとりとして信用出来ず、かけつけた警察をよそに、亡骸となった家族も置いたまま、カルテルからの逃避行を始めるのだ。
我々のような犯罪者が警察から逃亡するのでさえ逮捕までの月日と引きかえに、それ以上の大切な人や物を手離さなくてはならず、逮捕を恐れ自由の為に逃げていたのに、決して自由ではない事に気づくのだが彼女たちは違う。
何の落ち度もない普通の暮らしをしていた母子が、突如としてカルテルから着の身着のまま逃げ出さなくてはならないのだ。
メキシコ全土に及ぶカルテルの魔の手から逃れるには国境地帯の街から米国を目指すしかない。
しかし国境地帯までは数千マイルあり、陸路はカルテルが検問の為封鎖し、空路はオンライン上に名前が載るだけで発覚してしまう為交通機関は使えない。
最後の手段として限られた選択肢はひとつ。それは、もっとも危険な、ラ・ベスティア“野獣”と言う名称を持つ貨物列車の屋根にしがみついての恐怖の旅だった。
このままメキシコにいては、いずれ見つかり殺されてしまうため、苦渋の決断の上、ルカと野獣に飛びのり国境を越え一路アメリカを目指す。果たして彼女とルカの運命は…。
本作は冒頭から凄惨な銃撃による衝撃的なシーンから始まるが、決してアクションやスパイ物といった小説とは趣が違う。
限りなく現実に近いストーリーであり、メキシコのカルテルが支配する異常な社会やさまざまな理由から命懸けで国境を目指す移民の現状を克明につづった作品なのだ。
またルカを守る母親としての壮絶な覚悟と深い愛情が、どのページからも伝わり、ルカの成長も感じとれる物語となっている。なかでもホンジュラスから逃げて来たチョルティ族の姉妹との出会いが母子を強くさせてゆき、少女との絆にも心を洗われ、著者の想いが秀逸な登場人物にあらわれているのだろう。
フィクションだがフィクションでない、アメリカを目指す移民の実情がよく判る作品、是非読んでみて欲しい。
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A99さんの投稿
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