刑務所より俳句と短歌 Vol.6 (つぶやき付き)

いつも元気でスマイルしてますか。高圧線ビリー!です。
プリレポ投稿も回数を重ねる度に、文章を考える頭にも書く手にも潤滑油が浸透し、だいぶペンの走りがスムーズになってきた。 

湧き出る溶岩のごとく投稿ネタには事欠かない今日この頃ですが、今回は投稿職人としての独り言と、俳人としての句をつぶやき付きでお届けします。貴重な誌面を使わせて頂けた事に感謝し、早速、いってみようっ! 

修辞法の一つに「提喩(ていゆ)」があるのをご存知ですか?
「提喩」とは、より広い言葉で狭い概念を表すもので、例えば「花見」と言った時に「花」が「桜」を指すのが提喩。 

政治家の言葉をよく聞いてると、意図と意味をわざと取り違えるという場面がけっこうある。 
答えたふりして実は何も答えていない。これを「ご飯論法」といって、ご飯が「米のご飯」か「食事全般」かで曖昧である事を上手く利用するんです。
曖昧さを利用して相手の意図した意味と違う意味を選べば、そういう誤魔化し方が出来るんです。
悪い技術かも知れないけど、体得しておくと嘘付きにならずに済む。
悪用せずに会話や作句作歌を楽しむ為に僕は使ってる。人間は自分の頭に最初に浮かんだ解釈を絶対に正しいと思い込みがちだけど、相手の解釈もあると考えるのも大切です。 


俳句  


・待つことも楽しみなりて花のころ

(早速、提喩を使った一句。アラ・フィフになって待つことにも楽しみを見出せるようになったよ。僕も歳とったなァ!  )


・風鈴が忙しく揺れて涼を呼ぶ

(刑舎のどこにも風鈴なんていう風流なモノはない。この句の風鈴はテレビの中の風景と僕の記憶にあるもの。ホント、何気ない事だけど、塀の中に居るとこんな小さな事が心に安らぎをくれるんです。 )


・日焼けせし助勤看守の汗キラリ

(僕が務める作業工場には正勤と助勤看守が就いている。機械が唸り、夏は暑くて冬は寒い。そんな夏の日のちょっとした日常風景。  )


・涼風を受くる囚友(とも)らの汗光る

(夏の作業中は扇風機、休憩中は冷風機が回ってるとはいえ、とにかく暑い!極悪人たちの汗も美しいもんだヨ。 )


・油蝉激しく鳴けば熱帯夜
 
(この句は当所にまだ冷暖房が完備されてなかった9年前の句。運動場を走ってると油蝉が鳴く。その時は必ずうだるような熱帯夜になり、それを考えるだけで終日ぐったりしてたなぁ。  )
 

・労いを交わして凌ぐ暑さかな 
(人間関係の基本になるものの一つに労いの言葉がある。その言葉によって僕ら人間は互いの絆をつくってるんです。『触れ合う人々に思いやりの心で接しなさい。相手の気持ちを思い、優しい言葉をかけなさい』と道元禅師が説いています。    )


・空蝉や我れも脱ぎたき殻があり 
(熱中症対策で夏の運動は大体「運動禁止令」が発せられる。そんな時は運動場をてくてく歩き乍ら作句ネタを拾ってます。蝉のように過去という殻を脱いで真っ更な人間になれないかなぁ。無理か。  )

 ・獄窓の音のみに足る遠花火
(地元の花火大会は全て行ってたほど僕は花火好き!刑務所近くの花火大会の音は聞こえるけど、獄窓からは見えない(泣))


・これ以上脱げぬ暑さとなりにけり  
(刑務所の規則では、いくら暑くてもシャツとパンツは脱げない。ガマンできずに裸族にでもなったりしたらソッコーで連行されるぞ! )


・それぞれに歩く姿の暑さかな
(受刑者の年齢や出身地、性格で暑い時の歩く姿がそれぞれ特徴がある。どんなに暑くても背すじピーン!で歩く人も居れば、溶けてしまいそうなほどダラア~と歩く人も居る。観察してるとオモロイよ!)


以上の拙ない旬となりますが、句を嗜む者として僕はまだまだヒヨッ子です。
我こそはという方がおられましたら、プリレポにご投句頂けましたら幸甚の極みであります。
お互い句道を極めていけたらいいですね。 

それではまた会いましょう! 

※プリレポ / プリズンライターズ・リポートの略 ホームページ上のプリズンライターズの投稿を、受刑者会員は見れない為「PRISON WRITERS REPORT」という冊子を作成し、受刑者に配布しています。


2024年4月15日 


 

 A321さんの投稿

 

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