再犯率が減らない理由を考えてみた Vol.6 施設篇①

ここでは刑務所を“建物”としての環境の面から、どんな所で生活をしたり刑務作業をしているのか等を知ってもらえたらと思います。
ここも多くの問題を抱えているのですが、その改善のためには莫大な費用が発生してしまうものが存在するのも事実です。
「だから出来ない」と言うのではなく、来たる日のために試験的にする等のやりようは必ずあるはずなのです。要はヤル気の問題だけだと私は思います。  

日本の刑務所がどんなものかイメージができますか?
オレンジ色のツナギを着て比較的自由に所内を歩きまわれてそうで、面会では家族と手を取りあって… なんて言うアメリカの刑務所だとイメージしやすい方は多いのではないでしょうか。それに比べて日本の刑務所は「何か陰気な感じが…」ぐらいのイメージがせいぜいではなかろうか、と言う気がします。 

これは文化の差によるところが大きい気がするので何とも言えない部分とは思いますが、アメリカの刑務所は映画やドラマだけに限らず様々なメディアで取り上げられる事が多いオープンな風習に比べ、日本の刑務所はメディアであまり取り上げられる事がない閉鎖的なものだからだと思います。そして閉鎖的な文化の上で建てられた物は、どうしても閉鎖的な造りになってしまうのは道理なのかもしれません。  

そんな日本の刑務所が2025年6月より施行された「拘禁刑」により、それに合わせた処遇への変化が時折メディアで触れられる機会は増えた気がします。
そこで様々な変化をアピールしていたりするのですが、義務ではなくなったはずの刑務作業を拒否すれば罰せられたりする等、現場で本質的な変化を感じられる事はほぼないと言えるのが現実です。これは法律の方が先行してしまい、現場でどうするかの準備がほぼできていないのにスタートしてしまった感はいなめません。まだまだ“過渡期”にも入れていないのも、建物自体が今のままでは拘禁刑の処遇を100%発揮できないから(のよう)な気はします。 

現在の建物での作業場や生活圏は… 
まず最初に受刑者が作業しているところは「工場」と呼ばれているのが一般的でしょう。「お金篇」で少しお話した事でもありますが、こちらは本気になりさえすればそれなりのものを作れてしまうぐらいの生産能力は持っています。建物が古いところが多いので“老朽化”を抱えてはいますが、それでも使い方次第で何とでもできるはずだと思います。受注生産を何にするかによるところが大きい気がするので、これはちょっとテーマと外れる気がします。工場は特にここでは掘り下げないでおこうと思います。  

次に生活圏の中心となる部屋についてですが、作りは畳を使った和室型が一般的です。部屋には トイレに洗面台、私物を置く棚があり、工場就業者にはテレビが貸与されていて、「雑居」と呼ばれる集団部屋と「独居」と呼ばれる単独部屋の2種類に分かれているところまでは全国共通かと思います。「雑居」は定員6~8人で10~15畳ぐらいの広さを3~5人程度で使っているのが今は多いような気がします。「独居」は“単独”なので当然1人ですが、旧タイプと新タイプとでは若干広さが異なっています。旧が4畳ぐらいに対し、新しく建て替えているところのだと6畳ぐらいと広くなっていて、一番新しいところではちゃんと空調が効くようになっていたりします。  
新しく建て替えているところは「独居」を中心とした造りになりつつあるようですが、古い施設は「雑居」が中心の造りなので「雑居」がまだまだ中心となっているのが現実でしょうね。  


閉鎖して詰め込むだけだとこうなります。 
同じように人が集まる工場と雑居での部屋だと、部屋で問題が起きている方が多い気がします。勝手知ったる身内でも閉鎖的な空間に居続ければ相当なストレスになるものです。コロナでのステイホーム期間に「コロナ離婚」が多数発生したのがその事例の1つと言えます。赤の他人と言うだけでなく、一癖も二癖もある受刑者同士で閉鎖的な空間で生活させるのですから、そのストレスたるやはかりしれません…。今ではなくなったと聞きますが、定員6人に対して10人詰め込んだりする過剰収容していた時期もありました。当時の様々な状況があったのでしょうが、これで何も起こらないと思う方がどうかしているとしか言えません。  
状況的によく起こるのは対人関係から来るものが主です。軽いものだとケンカ、多くはありませんが刑務所で知った方法や仲間と… なんて言う新たな犯罪を生んでしまうケースもなくはありません。ですが、私が最も深刻だと感じる問題は別にあります。  

「自分を省みれない」と言う最も深刻な問題 
「それは個人の問題じゃないのか」と思われるかもしれませんが、少し考えてみて欲しいのです。まともに一般社会で生活している方でも自分を省みようと思うなら、落ち着ける場所で一人になろうとしないでしょうか?間違っても周りが騒がしい場所で複数人でと言うのは少数だと思います。仮に落ち着ける場所であったとしても、自分を省みるのはなかなか難しいのが正直なところではないでしょうか。それをただでさえ一般の人よりも自分を省みてこなかった受刑者が、常に癖の強い赤の他人がいるような環境で落ち着いて自分を省みるなんて事ができるなんて思えますか?さすがに厳しすぎると言わざるを得ないでしょう。本来なら受刑者が最も行わなければならない事です。それができる環境でないと言うのは「一体何のための受刑生活なのか?」と問いわざるを得ません。再犯率が減らないのも当然の事でしょう…。 

受刑者にもプライベートな空間は必要である 
自分を省みるためにも、一人になれて落ち着ける場所は必要だと思います。つまりプライベートな空間が必要だと言う事になります。雑居だともちろん一人にはなれないので、「じゃあ全てを独居に…」と言うのもちょっと安易すぎるかなと思うのです。それだけでは不充分です。  

まず全てを独居にするには先程からのべていますが、費用と時間がかかります。これを一括で一瞬にと言うのは現実的ではありません。晴れて全て独居になったとしても閉じ込めているだけの空間になってしまっていたら、一人にはなれていても落ち着けるかどうかの疑問がありますし、そのために人と交流するスキルを低下させてしまう事になっては、社会に戻っても孤立してしまうでしょう。「更生」と言うのは決して一人でできる事ではないと思います。誰かに「助けてもいい」と思ってもらえるぐらいの対人スキルは育てないといけないと思うのです。プライバシーを与えず、ただ管理重視の閉じ込めるだけのやり方は、もう無理があると思います。  

プライベートな空間を作る他国での取組 
刑務所である以上、カメラによる動行の監視は当然あるとしても、プライベートな空間を作れるような造りになって取組んでいる国はちゃんとあります。アメリカが有名ですが、中国もその辺は進んでいるようです。消灯から起床までは官側からロックがかけられるものの、基本全室完全開放個室になっているところがメインだそうです。そしてある程度所内は自由に動け、食事は食堂で取らせるようにしたり、ミーティングルームを設けたりして、交流を持つ事もできるようになっていて、売店で様々なものを購入できるようにしているそうです。作業においても、受刑者の意志に委ねられており、受刑者の自立心をできるだけ損なわないようにしたりと、建物全体の造りがそうなっているようです。  

ただ何の問題がない訳ではなく、アメリカだと所内に薬物が入りこんでしまったり、殺人も起きてしまうバイオレンスな面を抱えてしまうのもあり、“脱走→即射殺”に近いレベルでの重装備による警備だったり、中国だと8ヶ月個室に閉じ込める等の重すぎる罰則による抑止を行っているそうです。やはり元が犯罪を犯してしまった人の集団になるので、委ねすぎるとそれはそれで発生する問題はあるようです。日本の国民性的にさすがにアメリカ程に所内が乱れる事はないとは思いますが、重装備重罸等ができない以上、現在より乱れる可能性は排除できないと思います。アメリカや中国のようなやり方で安定して更生していけるのは理想的なのでしょうが、日本での完全再現には向かないと思います。だからと言って閉じ込めておいていいと言うのも違います。  

日本は全く対応してこなかったのか? 
色々な面を考えても、閉鎖・開放どちらもすぎるのは良くないのは確かです。とは言えちょうどいい加減と言うのがとても難しいと言わざるを得ません…。だからこそ必要な状況に応じて閉鎖にも開放にもできるような機能を建物が有している事をこれからは求められていると思うのです。建物の設備は重要であると言えます。  

約15年ほど前に“社会復帰促進センター”と呼ばれる半官半民による刑務所を誕生させました。この施設には“閉鎖・開放をどちらもできる”にかなり近い機能を持っている、かなり進んだものでした。ただ、民間が入った事で全国に数ヶ所とかなり少なく、初犯でも限られた人しか入所させない特殊なものになっています。 

どうしても避けられない問題はあるだろうが…
閉鎖にも開放に対応できるような機能を有する建物への建て替えには莫大な費用がかかり、新しい機能を付けようとするのなら尚更かかるでしょう。 

この“施設篇”の問題はお金の問題をなかなか避けられません… だからと言って「何もできない」と言うのは違うはずです。機能が今付いていないのなら、マンパワーで何かできる方法を探せば良いのです。上下階の移動はさせなくとも、1フロアー内だけは消灯まで開放してみる試験運用してみる等、何かできる事はあるはずです。それを「手間だ」と言って試しもしないのは、後の“職員篇”で詳しく触れますが、受刑者の更生を手助けする事も職員の仕事のはずなので、ただの職務怠慢としか言えません…。  

「刑務所に居るのも悪くない」と思わせてしまうような快適さの向上だけと言うのは良くないと思います。しかし「社会にちゃんと戻れるようになろう」と努力する場が向上していく事は、受刑者と職員の双方がいくら大変になる事であっても、行っていくべきだと思います。今回の問題の部分については、どうしても 莫大な費用がかかってしまう事が多いので、読んでいる方に少しモヤッとした感じを与えてしまった内容になってしまっていたかもしれません。ですが、少しでも刑務所の今が伝わり、皆さんに考えてもらえるきっかけの一助になればと思います。 

では、“施設篇②”でまたお目にかかりたいと思います。 

7/12/23

 

A304さんの投稿

 

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