「心の雫」短歌10首 vol.3

秋も深まり紅葉が色鮮やかに燃えています。コロナの感染者も昨日、東京は17人だとか、数千人という日があったことが夢の出来事のようです。ワクチン接種率が7割になったとか、やはりワクチンの効果でしょうか。このまま沈静化してくれるといいですね。 

 私たちの施設では、10月29日に運動会があります。競技は大玉を使ったボウリングと工場対抗リレー、全員参加のダンスという3種類です。工場も6つあるのですが、2つに分け、前半と後半に分かれて競技をします。リレーもタイムで競いますので、全部を終了したあと放送で結果を伝えられます。 

 コロナが無い時代は半日を使っての競技で、お菓子や飲み物も支給され、食べながらの観戦でした。残念ながら現在はお菓子も飲み物もなく、ひっそりとした運動会です。夕食は一応お弁当なので、ちょっと楽しみです。来年はコロナ禍が消え、以前と同じような運動会となることを祈っています。 

 こちらは女子刑務所ですが、最近男の刑務官が増えています。今までは解放雑居だったのですが、扉を変え内部も改装し、作業を終え、部屋に帰ると鍵を掛けられ、もう廊下には出られない環境となりました。それで男の刑務官でも巡回できるようになったのでしょう。夜7時を過ぎたら、朝まで男の刑務官が廊下を歩いているという日が時々あります。 

 先日、堂場瞬一の「砂の家」という本を読み、すごく考えさせられました。父親が事業に失敗し、一家心中をしようとして、母親と妹を殺害。残された二人の兄弟の兄を主人公にした小説です。その兄から見た父親への感情がところどころに表れます。その感情を読み、私自身と家族の在り方に重複し、考えさせられました。両親が加害者であり、被害者であるという環境が子どもに与える影響は大きく、事件がなければ普通の生活ができていたであろう子どもの憎しみは言葉では言い表せません。この本の主人公のつぶやきにより子どもの本心が推察され、より一層反省の気持ちが深まりました。しばらくしてもう一度読み返したく、この本はまだ手元に置いてあります。このような本に出会えたことを感謝しています。   

 

短歌10首 

1.秋色の空の雫を手のひらに今日の命の静かに燃える 

2.誰そ彼の淡き夕宵降りければ獄の淋しさひそと浮かびぬ 

3.美しき桜紅葉を見上げれば晩秋の空はるかに広がる 

4.秋の夜の深き静寂の虫の音が過去へ過去へと我を誘う(いざなう) 

5.カラカラと風に転がる枯れ落ち葉女囚の列の粛々進む 

6.わずかなる野の花追いて飛びゆける秋の蝶には黄金の刻(とき) 

7.秋桜の淡き色あい満つる園老いたこの身も童の心 

8.あれそれで話は通ずる齢なりどんと構えて六十路もはるか 

9.会いたいと書けない手紙に封をして秋の夜長の虫の音高し 

10.真夜中を長き貨車行く音聞けば北のふる里想いは募る 

2021年10月27日

 

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27年間の収容生活を経て