人間ではなかった自分

・・ここから事件の話になるのですが、これがプリズンライターズに載せられる話かどうかも分かりませんので、一応書きますが、判断はそちらに任せます。 

当時、私は被害者の執った行動が本気で許せなかったのです。 

私の友人2人に言葉巧みに近づき、友人の会社に入り込み、会社の金を使い込んでしまったのです。友人は再三、私に相談に来たり「野郎、殺してやる」等と言ったりしていたので、その当時は私のほうが制止してました。 

そして私は、被害者と一緒に病院の競売にも手を着けており、被害者にも800万円程貸しておりました。 

そうこうしているうちに、影で私の雑言を言ったり、ついには私の経営するフィリピンパブも乗っ取ろうと動き、そして今度は妻や子供の雑言を他人に言い始めたので、私もとうとう切れてしまいました。 

友人を呼んで、病院の競売が終わった時に事を起こすから、2人の友人に後処理を頼むと話を決め、競売が終わった日、話し合いで済めば良いと思い話し合っていたのですが、話が折り合わずにとうとう箍が外れてしまい、銃で射殺してしまうという事件を起こしてしまったのです。 

その後、友人2人はビビってしまい、後処理には出て来てくれませんでしたが、使われてしまったお金をその後に約束通り、病院売買の着手金の中から渡してあげたのです。 

そして私も、被害者に貸したお金を着手金から頂いたのですが、これが仇となり、強盗罪が加わってしまいました。 

警察での取調べも事情を察して頂き、大変同情的な取調べをして頂き、他部署の刑事さんからも差し入れ等を頂きました。警察の内偵でも、被害者に対して良く思っている人は少なく、被害者の従業員からも殺害計画が出ていたこと等を聞かされ、驚愕しました。 

ですが、どのような事情があれ、事件は事件として扱わねばならないので、勘弁してくれと最後に最敬礼までして頂きました。 

しかし、私の刑が確定する3ヶ月前の平成15年9月11日に、妻を蜘蛛膜下出血で亡くしてしまい、悔しいやら情けないやらで言葉になりません。 

義母が心臓の病で他界しており、義父も蜘蛛膜下出血で3回も倒れ(妻の死後1ヶ月後に他界)ていたので、妻もそのようにならなければ良いがと、懸念していたことが現実となってしまい、〝天網恢々疎にして漏らさず〟因果応報と申しましょうか、許されないことをしてしまった私への報いなのでしょう。 

生前、妻の遺言だったらしく、もしお母さんが鬼籍に入ってしまったら、私の骨の一部をお父さんが帰って来たら渡してほしい、もしお父さんが中で鬼籍に入ってしまったら、一緒に骨壺に入れてほしいと言って、一部を残してくれたことが心の救いです。今でも仏壇にて妻の一部が私の帰りを待っています。 

他人様の大切なものを奪ってしまった為によって、私の大切なものを奪われてしまったのですね。 

必要とされる人が居なくなり、必要とされない私が残ってしまい、世の中上手くいかないものです。できることなら妻の命と引き替えに私が替わってあげたかった。今更後悔してもしょうがないのですが、後悔の一文字です。 

そして平成15年11月に刑が確定し、翌16年1月より此処に於いて後悔の日々が始まりました。今は被害者に対しての供養も大切なことと自覚しております。 

妻が平成17年の7月に、夢で真剣に語りかけてきたのです。 

いつもは笑いながら夢に出てくるのですが、その日に限って真面目な顔をして「お父さん、死んだら何も残らないんだよ!全てなくなってしまうんだよ!だから供養してあげて!」と言ってきたので、ビックリしてしまい、あの野郎!成仏してないのかと思い、ご先祖様や妻への勤行題目の時に、被害者に対しても題目を唱えるようになりました。 

1ヶ月くらいは嫌悪という感じでしたが、それを過ぎると、それが当たり前のようになり、今では毎月供養し、年に数回此処で行われる供養会にも出席しております。 

射殺して遺体を海に流すなどと、人のやることではありませんよね。当時の私は人間ではなかったのかもしれません。 

今思えば、とっても恐ろしいことで、もう一度できるかと問われたら多分無理でしょう。やはり一時、人間ではなかったのですね。このような形で事件を起こしてしまったのです。 

 

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